

風は巡り、光と笑い声は満ちてゆく
潮風とともに太平洋の風が吹き抜け、空の高さを感じる──自然豊かな静岡県御前崎市。4年前、この地に家族と移り住んだのが、画家・JIRO(鈴木次朗)さんだ。長野に生まれ、北海道や石垣島で育ち、大学進学を機に九州へ。卒業後はオーストラリア、カナダ、南米を旅し、多様な文化や価値観に触れてきた。移住先に御前崎を選んだのは、自然の豊かさと、気負わずに過ごせる穏やかな空気に惹かれたから。今は、心地よいこの土地に建てた家で、妻の七奈絵さん、長女の朝陽ちゃん、長男の悠陽くんと暮らしている。
玄関の扉を開けると、やわらかな光に満ちた空間。子どもたちの笑い声と木の香りが、ふわりと混ざり合う。仕切りをできるだけ減らした開放的な間取り。自然素材のぬくもりに包まれながら、家が呼吸しているような感覚に包まれる。「ここは世界一落ち着ける場所」とJIROが笑う。そのひと言に、この家がもたらす安心感がにじむ。空間に余白があるからこそ、心にも深い呼吸が生まれる。光は暮らしのリズムに合わせて動き、風が巡り、笑い声が響く。あたりまえ、だけど何よりかけがえない。そんな暮らしの空気感こそ、この家の魅力だと思った。


体にやさしい、安心できる空間
家を建てようと思ったきっかけは、子どもが生まれたこと。「体にやさしくて、安心できる空間をつくりたい」──そんな想いが、ご夫婦のなかに自然と芽生えた。素材のこと、デザインのこと、子育ての環境のこと。理想の暮らしを思い描いていく中で出会ったのが、アイジースタイルハウスだった。いくつかの会社を見てまわるなかで、もっとも惹かれたのは「住まいの気持ちよさ」と「人の誠実さ」。「モデルハウスで感じた空気が、とにかく心地よかった。呼吸が深くなるような感覚があって。それに、裏表のない誠実さをスタッフのみなさんから感じたんです。この人たちとなら、一緒に家づくりができると思えた」と、JIROさん。
そうして始まった家づくりは、カーテンボックス、間接照明、グレーの塗り壁、細かなこだわりも、すべてカタチにできた。「見た目だけじゃなく、構造の部分から“本当にいいものを”という考えが伝わってきたのが大きかった。“シンプルだけど質のいい家”ができていく感覚があって、うれしかった」と振り返る。七奈絵さんも、「子どもたちが安心して遊べる空間で子育てがしたかった」と、自然素材を大切にする家を選んだ想いを話してくれた。実際、朝陽ちゃんと悠陽くんは、床に寝転がったり、家の中を自由に駆けまわったり、外でも中でも、のびのびと楽しんでいる。


暮らしという創造の時間
朝は家族そろって、ゆっくりと朝ごはんを囲む。コーヒーを飲みながら食卓を片付ける時間も、穏やかな一日のはじまり。晴れた日には庭に出て、木を剪定したり、草花の手入れをしたり。それが、JIROさんの小さな楽しみのひとつ。DIYに家庭菜園、そして絵を描く時間までも、すべてが家族の営みの中に自然と溶け込み、暮らしの一部になっている。「家って、楽しいことがある場所。だから子どもたちも、家が好きなんです」と話すJIROさん。
朝陽ちゃんと悠陽くんは階段下に秘密基地をつくって遊んだり、アトリエの片隅で絵を描いたり。自由な発想で空間を使うその姿が、この家の豊かさを物語っている。
七奈絵さんは、ロースイーツを提供するカフェで働きながら、家ではお菓子作りを子どもたちと楽しむ。安心できる素材を選び、使い方や目的に合わせて工夫する姿は、暮らしと住まいの捉え方が地続きであることを映し出している。「暮らしって、すごく創造的なものなんですよね」とJIROさん。日々の営みが、まるで一枚の絵のように重なっていく。暮らしと表現がにじむように溶け合い、そのすべてを受けとめてくれるこの家だからこそ、そこにあたたかな時間がある。



たどり着いた、自由になれる場所
「自由なんですよね。絵を描いているときって」。
そう語るJIROさんは、かつて自由を求めて世界を旅していた。けれど今は、「もう、自由になれた」と穏やかに微笑む。光と風が抜ける空間、無垢の木と漆喰のやさしい質感、そして季節のうつろいを肌で感じられる暮らし。どこを切り取っても、体と心が自然にほどけていくような感覚がこの家にはあるという。
「自然って、それだけで完璧なんですよ。命や光、全部がつながっている。僕の絵のテーマにも通じていて。そんな自然の素材を使って家を建てられることが、本当にありがたいなって思うんです」。
JIROさんの言葉には、「地球品質」の本質を感じさせてくれる。見せるためではなく、生きるための“表現”としての暮らし。そこにあるのは、感謝と自由、そして手ざわりのある日常だ。
「地球品質、それが一番贅沢ですよね。うわべだけ見繕って良いように見せたって続かないし、繋がっていかないですし。やっぱり昔から先祖代々受け継がれてきたものって、シンプルにいいものだと思うから」。
そう穏やかに話すJIROさんの言葉から、今を生きることへの感謝が溢れていた。