キラーフレーズは、“漆喰が標準使用です”
頌彦さんのご家族がこの浜松に越してきたのは、もともと尚さんの転勤が きっかけだ。最初は期間限定のつもりだったが、住んでいるうちにこの地の自 然の豊かさや暮らしやすさ、何よりも人の温かさに惹かれ、ご夫婦の気持ち は少しずつ変わっていった。以前に住んでいた佐鳴湖周辺は、「目を細めると ハワイやヨーロッパにも見えた」と冗談混じりに話すご夫婦は、お互いに自然 な流れで、家を建てるという決断に至ったという。
アイジースタイルハウスとの出会いは、インスタグラムだった。天然素材を使 用し、地球にやさしい家づくりをしている点に惹かれ、初めてモデルハウスを 訪れた時の感動が決め手になった。「個人的には、“漆喰が標準使用です”が キラーフレーズでした。結局、最後はそこが譲れなくなったというか」と尚さん。自然素材とともにある暮らし。それが、家族のこれからの人生を託す住ま いの揺るぎない軸になった。
叶えられた多彩なこだわり
この家には、ご夫婦のこだわりが随所に詰まっている。玄関を抜けると、リビングの床はモルタル、ダイニングの床は無垢材という、異なる素材が広がる。
以前暮らしていたマンションでモルタルの床がとても気に入っていたこともあり、家を建てる際にはぜひ取り入れたいと考えていた。とはいえ、無垢材の魅力も捨てがたく、段差を設けずにスペースを分けることで、両方の素材をバランスよく実現した。
「引っ越してから初めての冬に、無垢材の床に隙間ができているのを見て、『我が家も生きているんだ』と感じたとき、アイジーさんで家を建ててよかったなと思いました」と尚さんは話す。
住む場所にも、強いこだわりがあった。「できれば湖のそばで暮らしたい」という想いを抱いていたが、土地探しは難航。そんなとき、アイジースタイルハウスの設計担当から「こだわりを少し見直してみませんか」と提案され、視点を変えて探してみたところ、この土地に巡り合うことができた。
敷地はやや変形しており、間取りの設計が難しい形だったが、玄関を抜けると大きな窓と庭が広がり、リビングの開放感をしっかりと確保。さらに、真正面に階段が配されるという、希少な間取りを叶えた。
「この階段も、こだわりのひとつなんです」と玲子さん。家づくりの途中で家族旅行に訪れたアメリカで宿泊した家にあった階段が理想そのもので、その写真をもとに相談したところ、安全性とデザイン性を兼ね備えた形で再現してもらえたという。「細かな要望にも耳を傾けてくださって、叶えてもらえたのが嬉しかった」と玲子さんが語るように、ご夫婦とアイジースタイルハウスとの丁寧な対話の積み重ねが、キッチン天板、トイレ、洗面台など、細部に至るこだわりとして息づいている。
暮らすことで、使い込んでいく家
リビングの一角に据えられた薪ストーブは、この家のシンボルのような存在だ。
寒い季節には、火を囲みながらピザをつくるのが家族の定番。「子どもと一緒に生地に具材を乗せてつくる時間がなんとも贅沢です」と、玲子さんは笑顔で語る。パチパチと薪がはぜる音と、部屋いっぱいに広がる香ばしい匂い。それらすべてが、家族の記憶として重なっていく。ピザに添えるバジルも、庭で育てたものだ。家庭菜園は玲子さんがずっとやってみたかったことの一つ。少しずつ野菜やハーブを育てていると、子どもたちも自然と土に触れる。「食べ物を育てることや、大切にいただくことを、日々の中で感じてもらえたら」。そんな想いから、小さな家庭菜園が庭に生まれた。
2階のフリースペースは、いつしか尚さんのアトリエのような場所に。これまで集めてきたお気に入りのものや多種多様な植物が並ぶ空間で、一人で絵を描く。気づけば夢中になっている。そんな時間が、この家では自然に生まれる。
「使い込んでいく中で、味が出てくるのがいい」。尚さんの言葉には、この家へのスタンスが端的に表れている。完璧に整えるのではなく、暮らしの痕跡をそのまま受け入れる。無垢の床に生まれた小さな傷や、飛び散った絵の具も、すべてが“暮らしている証”として、この家の風景になっていく。
人間らしく生きられる場所
ご夫婦は、家づくりを通して、より強く考えるようになったことがある。それは、これから子どもたちが生きていく“地球”のことだ。「子どもたちが大人になった時も平和であり続けてくれたらと考えた時に、自分にできることって少ないかもしれないけれど、せめて日々の選択のなかで、地球にやさしい方を選んでいけたら」と玲子さん。浜松の地に建てたこの家には、そんな願いが丁寧に息づいている。
そして、「人間らしく生きられる場所」でありたいと、ふたりは口を揃える。漆喰の壁に差し込む光と影に感じる心の余白。モルタルや無垢の床に刻まれる暮らしの跡。自然素材に囲まれた住まいでの日常は、どこか“動物っぽさ”といった、人としての本来の感覚を思い出させてくれるという。「人間も、いきものだから」と尚さん。ご家族が選んだ暮らしのすべてを象徴している。“住まい”という箱ではなく、“生きていく環境”としての家。その日々のなかで、心と体に心地よさを取り戻していくように、今を楽しみながら、生きている。